胎児は母の胎内で、動物がたどってきた数億年の進化の歴史を
追体験している、というのが三木成夫の持論。たしかに図解を出されればそんな気がするし、ロマンがあっていい話。でもそれ以上にこの本で面白かったのが、学者としての性に三木の理性が負けてるくだり。真実の追究のためとはいえ、人道にそむいて良いんだっけって、人の子らしく悩む時期があるんだよね。でも結局知りたいという気持ちが勝ってしまう。しかもそのお陰で、自論が正しいと裏付けられるような成果が出ちゃう。このときの興奮が文章からも伝わってきて、ぐいぐい引き込まれる。知るってすごいなー、研究っておもしろいなー。そんなポジティブな気持ちよさと同時に、興奮にまぎれてちょっと前の葛藤は完全にないものになっていることにも気付いて、一つの領域に一歩踏み出しきれないぼくは、学者の特定領域に対する
萌え度の深さに空恐ろしくなるのでした。(3/40)