気分は日記

あんまり調べずに書く、よくある感じの日記です。

情報誌は広告枠として死にました


後輩が、雑誌を作るチームへ異動になった。そんなときタイムリーに届いたニュースがある。

リクルート、転職情報誌「ビーイング」3月休刊

このニュースについて、いくつか感じたとこがある。営業に近い位置で制作を担当してきた分、後輩のために、なにかヒントになることが伝えられたらと書き出したはいいものの、結局まとまらなかった。とりあえず、ちょっとここに晒します。まじめで、しかもくどいのでたたみます。どうか、良い雑誌ができますように。


雑誌は採用ツールとして死にましたか

リニューアルするも広告出稿企業が激減、6号で息絶えた月刊とらばーゆに続き、ビーイングも休刊…。今回の休刊は、出稿する側の企業が採用という目的を達成するためのツールとして見た場合、費用対効果を考えればWebだよね、という人事担当者たちの意見を素直に受け入れた結果なんだとおもう。もし、効果が計測しづらい雑誌媒体で採用に直結するツールとしてのビジネスを続けるんだったら、きっと下記2つの不満をクリアしなくっちゃならない。

・雑誌広告って応募効果計測しづらいじゃん
・グラフィック広告つくるのって手間かかるじゃん


人事は結果を出さないといけないポジション

まず1つ目はどうだ。人事は、バックオフィス系職種の中では唯一採用という明確な数値目標があるポジションだ。めんどくさい会議を繰り返して、社内の稟議を通してやっと確保した採用費を使って、その目標を達成しなくちゃならない。外資だったら2Q中に結果を出せなければお払い箱だ。そんな環境で、PVや応募への落下率まで把握できるWebに比べて、明確な効果測定が出来ない雑誌広告なんて、怖くて使えないだろう。しかも出稿料はWebに比べて2倍以上ときている。限られたリソースで、しかも短い期間で結果を出すためのツールとしては、ちょっと使い勝手が悪すぎるというのが現状だ。


忙しいのにメイン業務(と思えない)ことには頑張れない

つづいて2つ目について。人事担当者は、企業の規模によっては総務も兼任している、なんて人も珍しくない。ぼくたちが思う以上に、人事って仕事は忙しいみたいだ(もちろん会社によるだろうし、きっとぼくたちのほうが忙しいけど!)。そんな忙しい人が、別に興味のない、しち面倒くさいクリエイティブのフローに積極的に付き合ってくれるだろうか。すごく感情的なところだけれど、大切な部分だ。担当者が決裁権を握っている場合はまだいい。上司が居て、場合によっては担当者が社長にプレゼンしなくちゃならない。通常の、会社を上げて巨額を投資する、なんていうSP広告とは毛色が違う。片手間でやるには、ちょっと人的なコストがかかりすぎるんじゃないか、きっと。


効果を出す媒体、というスタンスはもう無理じゃね?

じゃあ、ぼくたちは雑誌という枠を見捨てず、企業から選択してもらうために、どうしたら良いんだろう。今までも、いろんな媒体が工夫してきたよね。効果測定を実現するためにWebとの連携を図ってみたけど、人事の不安を払拭するほどの数値は出なかった。人事が予算的にも業務的にも大変なのであれば広報を巻き込もうと、とらばーゆブランディング広告を主体にし、出稿者の体制を整えた。でも休刊になっちゃった。とらばーゆのリニューアルは、コンセプトをもった有料情報誌への挑戦だったと思うのだけど、すこし、中途半端だった(方向は合っていたと思う。ここについては、あとで述べる)。たいへんだ。けっこうみんな、いろいろやって、失敗している。


媒体として、別の価値を見出す必要性

ちょっと目先を変えよう、『住む場所』で読者がターゲティングされているタウンワークが生き残って、『性別』や『志向性』でターゲティングされていたとらばーゆビーイングが休刊になったのは興味深い事例だと思う(有料/無料の違いもあるんだろうけど)。ツールとして、きっとタウンワークは機能しているんだろう。リクルートお得意の営業展開でフリーペーパーラックのベストポジションを確保したことによって企業が欲しい人(タウンワークで募集する多くの職種が特別な技能を必要としないのも特徴だ)が読んでるし、出稿料も安いし、ほとんどデータ欄の広告だから、社内のコンセンサスだってとりやすい。ぼくたちが考えるべき雑誌の性格とは少し違うけど、読まれているというのは媒体としてなによりも安心できる選択基準になるんだ。


「情報を精査して、オススメする」機能としての雑誌

じゃあ、どうしたら読んでもらえるんだろう。やっぱり、読者がお金を出して買う雑誌は情報の羅列である前に、コンテンツとして機能すべきだと思う。Webで情報が簡単に手に入るようになったからこそ、転職者をはじめとする読者は、そろそろ、誰かにオススメされたい頃なんじゃないかな、と思うんだ。


「情報を発信する」という当たり前の広告展開に改めて気付かせる

各求人情報に単体でアクセスできてしまうWebでそれを実現するのは、なかなか難しい。媒体の顔つきが見える前に情報にリーチしてしまうプラットフォームでは、枠を買ってもらう今のスタイルである限り、個別の広告が頑張って、選んでもらえるように個性を発揮してユーザーがやってくるのを待っているしかないのが現状だ(ここはぼくたち制作者が頑張らなくちゃならないところなので、別の機会に考えよう)。だったら、Web上でなんか待っていないで、ちがう媒体に出かけていったほうが有効だ。「転職者は、ぼくたちが発信する情報を欲して、雑誌を買ってくれています。そこに合わせて広告を出稿することで、御社の発信している情報が、待つだけではない。積極的な採用活動の手段になるんです」。こんな風に、言えるはずだ。なんのことはない、雑誌広告がはじまった当時の理論に戻っただけだ・だから、結局たどりついたのは、なんだよ昔から言われてることじゃん。

「ぼくたちは、おもしろい雑誌をつくります。そこに広告出しませんか?」

けっきょく、こんなことに行き着いちゃう。でも、今だからこそ大事にしなきゃいけないことだと思う。広告なんて、不動産と一緒だ。その枠の価値で、みんなが欲しがるかどうかが決まる。Webで誰しもが情報発信出来るようになって、土地代がインフレ起こしている今だからこそ、誠実に、いい土地を作り出す努力をしなくちゃいけないんだよ。


Webの抱えるキャズムを超えろ!なんつって

広告枠を売りやすい企画を考えよう、なんてやっぱり不健康だ。ポータルサイトをはじめとする、Web媒体をベースとした広告を見てみろよ、効果測定がしやすく、しかもこんなにお安いです、なんて機能面にばかり発展していったあっちの広告は、けっきょく価格競争になって、もうすでに枠売りビジネスの限界点に来ちゃってるじゃないか。価値観がひっくり返るような仕組みが産まれない限り、人があつまるのは素敵なコンテンツのある場所なんだと思う。そのコンテンツを雑誌に置き換えれば、もちろん編集記事であるし、広告記事でもあるだろう。雑誌をつくる人になったら、意思を持って、すべてのコンテンツをコントロールしてほしい。制作部隊を社内に抱えてるからできることだよ。企業の人事担当が、ぜひ出稿してみたい、と思わせるような、洗練された紙面にしてほしい。そのためには、きっと広告制作のクオリティを高めることも急務だと思う。がんばって、ぼくたちの尻をたたいて欲しい。「こんなレベルの広告じゃ載せられないよ!」なんてね。そうまでしないと、情報誌と名乗る媒体は、もう要らないんじゃないだろうか。


うらづけもなにもない、現場で感じたことの垂れ流しだけど、なにかの役に立てばいいと思う。いい雑誌を創ってくれよー。がんばれ。