気分は日記

あんまり調べずに書く、よくある感じの日記です。

簡単日記(20231127)

ドビュッシー 著、平島正郎 訳『ドビュッシー音楽論集 反好事家八分音符氏』(岩波文庫)を読む。ドビュッシーの言い回しには表情があり、翻訳の小粋さも相まって、ことば自体を読む楽しさがあった。

たびたびリヒャルト・ヴァーグナーが言及されていて、その頻度と激しさに驚く。ドビュッシーは熱心なヴァーグナー肯定派だった時期もあるというから、その攻撃性の背景に興味を惹かれた。訳者による補足の項に、ドビュッシーが記者に語ったという言葉があり、彼の姿勢を表しているように思えたので以下に書き抜く。

私はヴァーグナーの敵でもありませんよ。ヴァーグナーは天才です。ただ、天才ってのは間違いをおかすことがあるんだな。ヴァーグナーは、和声の法則の側につきましたね。私は自由のほうをとります。自由は本来約束ごとにに縛られません。私たちの周囲にきこえる音はみんな、聴かれていいんです。するどい耳がまわりの世界の旋律(トリム)のなかにききとるものは、みんな音楽的にあらわすことができます。何よりもまず規則にしたがいたがる人たちがいますが、私はですな、私が聴くものしか、鳴らそうとは思いません。(P.321「訳者覚書」)