気分は日記

あんまり調べずに書く、よくある感じの日記です。

羞恥

チョン・スチャン 著、斎藤真理子 訳『羞恥』を読む。「脱北者」が韓国社会で生活していく現実を描いたと言われている小説だ。

戦争や歴史、政治、経済といった個人を飲み込んでいく大きなうねりの上澄みを無意識に利用し溜飲を下げようとしてしまう恥知らずな人間たちによる物質主義社会の中で、経験してしまったこと、背負わなくても良かったはずの罪の意識、そこから生まれた忘れ得ぬ羞恥心を見つめ、その向こう側に見える不確かだがその瞬間は確かに存在している「生」を意識せざるを得ない人たちの話だった。

社会問題を扱いながらもその引力に負けぬ存在感のある人物像を描き切り、その上で、傷ついた人が抱えるどうしようもない寂しさに寄り添うような普遍的な物語として完成させていて骨太。かなりよかったです。